では、あらためて「ソーシャルネットワークゲーム」、つまり「社会的なつながり」と深い関わりを持つゲームとは、普通のゲームとはどう違うのかについて考えていきましょう。
しかし、これをいきなり掘り下げてしまうと、現在流通しているソーシャルネットワークゲームを基準に比較分析しまう恐れがあるため、周辺の状況・環境から紐解いていこうと思います。
まずは、普通のゲーム(ここではコンピュータゲームと定義します)が「社会的なつながり」を持ち始めた(と思われる)流れを含め、少し考察を進めてみましょう。
(ちょっと前までの)一般的なゲーム
ちょっと前、2000年頃までは、ゲームというと「一人で遊ぶ」ものが多かったと思います。もちろん、対戦ゲームなど複数人同時にプレイ出来るゲームなどもありましたが、アドベンチャーゲーム、シューティングゲーム、アクションゲーム・・・多くのゲームが一人向けであり、プレイヤーはTVやパソコンの前に一人座って黙々とプレイしていたのです。
特に、家庭用ゲームは「ゲーム機本体」を入手して、ゲームソフトを購入してプレイするスタイルでした。ゲームソフトは7、8千円位はする高価な商品で、子供たちは1本手に入れたら、たとえクソゲーでも骨の髄まで遊び尽くすというのが当然でした。
ゲームセンターのゲームは、100円を入れて規定時間、残機数分遊ぶというスタイルでした。こちらは、自分が遊んでいない間は他のプレイヤーのプレイを見るというのも、それなりの楽しみ方だった気がします。友達と遊びに行ったとしても、結果的にはゲームプレイしている瞬間は「一人遊び」が殆どでした。
ゲームのプレイスタイルの変化
しかし、こうした中で少しずつ変化も起きていました。
日本の代表的なRPGである「ドラクエ」は、「ドラクエ9」まではゲーム本体はほぼ自分一人でプレイするものでした。「ファイナルファンタジー」も、「FFXI(FF11)」「FFXIV(FF14)」以外は一人用ゲームでした。
しかし、「ドラクエ」「FF」をはじめとする人気RPGには、ある「社会的なつながり」に関係する状況が生まれていました。
それは、「友人と情報を共有する」という新しいスタイルです。「水門のカギ、どこにあるか全然わかんねェんだけど」「ああ、あれはラゴスが持ってるよ」「えー、どこどこ、どこにいるの!?」という感じで、一人プレイで謎が解けず詰まった際、周囲にいる人との交流で情報を得て、更に楽しむという形でした。つまり、「プレイ自体は一人だけど、周囲にいる友人の協力により先に進むことが出来て、更にゲームや友人関係が楽しくなる」というものです。
一方、ゲームセンターにもこうした大きな変化がありました。それを演出したのは、「スト2」こと「ストリートファイターII」の存在です。
「スト2」はもちろん一人でも遊べるのですが、対戦をするために行列が出来るほどでした。その頃のゲームプレイヤーたちのキモチを考察してみましょう。
- 最初は一人でゲームプレイをはじめる
- 一人遊びで充分楽しい
- しかし、上手くなるにつれて少しずつ飽きてくる
- ふと2P対戦を試してみる
- ほぼ読めるようになったCPUの動きと違い、意外な動きで驚きの連続
- ゲーム台の向こう側にいる人の「あっクソ!」「やったー!」などの声が聞こえる
- 対人戦だけに、CPU戦にはない興奮を味わえる
- 時に、プレイ内容が原因でケンカなども起きる(きたねェ、ハメやがって!)
- 対戦相手に勝ちたい気持ちが高まる
- 1Pプレイで練習する
- ゲームを始めた頃はそれ自身が楽しかった「一人遊び」が、人に勝つための「手段」に変化
- こうして対戦を続けると、徐々にゲームセンター内にグループ、派閥が育ってくる
- グループvsグループという形での対戦が発生する
- ゲームセンター主催、地区主催や、ゲームメーカーによる全国大会なども開かれる
こうして見ると、実はスト2は周囲、社会を巻き込んだ「社会的なつながり」と深くかかわった「ゲーム」、つまり「ソーシャルネットワークゲーム」と言える気がしてきます。
しかし、「スト2」のソーシャル性にも限界がありました。「同じ場所」「同じ時間」を共有していなければ、こうした「ソーシャル的楽しみ」を味わうことは出来ませんでした。また、「アーケードゲーム」という性格上頻繁にバージョンアップがある訳でもなかったため、他の新規ゲームの登場などにより徐々にその人気は静まっていきました。
オンラインゲームの登場
1990年代から、ネットワークゲームが日本にも徐々に入り始めて来ました。当時はLANを使ったものが中心でしたが、DoomやDiabroなどの対人対戦は、それまでのゲームとは一線を画したものでした。しかし、社会的なつながりという意味では、スト2のそれと同様に「同じ時間」を共有しなければならず、また距離は少し離れたものの、「同じ場所(LAN内、つまり同フロア/建物内)にいる人同士のみが楽しめるものでした。
それが、インターネットを使ったQuake等の登場により遂に「同じ場所」という制約が取り払われました!これは大変大きなことで、顔も知らないどこかの誰かと対戦が出来るという「オンラインマッチング」は、ゲームの世界を大きく広げることになりました。しかも、当時は人力だった面も多いですが、仲間同士で協力したり団体戦を行うといった「クラン」という文化も醸成されていきました。
そして、MMO(Massive Multiplayer Online)型のサービスも徐々に拡がりを見せました。ウルティマオンラインの登場以降、RPGはMMOでなければ実現出来なかった様々な楽しみ、仕組みが提供されるようになりました。
現在のオンラインゲームの殆どは、例えばクランシステムの発展やサーバー接続面の技術的向上(当時は2~4人対戦だったのが、現在では100人を超える接続も可能)は進んでいますが、本質部分はほぼこの当時に生み出されたものの拡張版と言えるでしょう。
そして、そこに「同じ時間」の参加が必須な点は、メール、掲示板やオークション等といった一部のコミュニケーションを除き、ゲーム本編ではほとんど変化していません。
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