ロボットが愛を告白する時代は来るのか?

投稿者: | 2020年4月1日

人は、自分以外の存在を愛することが出来る生き物です。例えば恋人や配偶者、子供、親、友人、ペット、さらには自分の周囲(環境、国など)など、社会の中には「愛」が溢れています。

このように人間にとって非常に身近な「愛」ですが、一方「愛とは何か」と聞かれて、うまく答えられる人も少ないのではないかと思います。

今回の記事では、「愛とは何か」を議論するのではなく、「ロボットが進化すると愛を告白することはあるのか」ということを考えていこうと思います。

ロボットの思考

ロボットには、いくつかの種類があります。外見でいうと人型・動物型といった生物タイプ、腕や足だけといったパーツタイプ、そして人や動物とは全く異なる機能実現タイプなど、用途に応じて様々な形が存在します。

そして、ロボットのコントロール方法についても、様々な種類があります。単純に人が操作するリモートコントロールタイプ、決められた動作を繰り返すパターンコントロールタイプ、そして最近話題になりつつあるのが、AIによる自己判断タイプです。

現代のAIは、過去行われた人の行動や何らかの現象・事象をデータ化したものを大量に記憶させ、そこから目の前の事象に類似するものを抽出して最適なものを選び出す、というものが主流のようです。

例えば将棋などは、過去の棋譜を大量に覚えさせて、今目の前にある局面で勝利する確率がもっとも高い一手を選ぶ、という感じです。最近では、単純に一手一手で判断するのでなく、局面を通じて連続的な思考をするものも増えてきているようです。

つまり、これは生物が持つ「経験を積むことで、次にやるべきことを考え出す」という機能をシミュレーションしたもの、と捉えることが出来ます。

子供の頃は、親や周囲を見て情報を蓄積し、日々聞こえてくる言葉から言語を覚え(だから日本語を話す親の子は日本語を話しますし、ドイツ語ならドイツ語、となります)、親が作る料理を横でみていると見よう見まねで料理のコツを覚えたり、親の仕事を見ているとそれに興味を持ったり。

繰り返し見て覚える、というのが重要なようで、学んだケースが少ないと、なかなか正しい答えを導き出せなかったり、応用が利かなかったりするようです。試験勉強を思い出してみると、コツコツ繰り返し勉強している人は、テキストやドリルにあった問題とは違うものも解く力がつきますが、一夜漬けに頼っているとヤマが外れたときに応用できず大失敗する、ということに近いと思います。

つまり、ロボットの思考という視点で見ると、人の「情報を蓄積して最適解を導き出す」という能力については近いうちにほぼ同レベルになり、将来的には人間を超越していく可能性が高いのではないかと思います。

愛のプログラムとは

愛については、前述のようになかなか一定の解釈は無いと思いますが、愛にまつわる事象・条件などは、いくつか挙げられるかと思います。

例えば「好き」になる思考について考えてみましょう。自分に嫌がらせや嘘をつく人はなかなか好きになれませんが、いつも自分に良くしてくれる人は、好きになるのではないかと思います。いくつか書き出してみましょう。

  • 好きになる条件
    • 食事を与えてくれる
    • 話を聞いてくれる
    • 優しくしてくれる
    • 質問すると答えてくれる
    • 正しいことを教えてくれる
    • 自分のことを好きと言ってくれる
    • 顔が好き
  • 嫌いになる条件
    • 自分から物を奪う
    • 話を聞いてくれない
    • 攻撃的で暴力をしてくる
    • 何も教えてくれない
    • 間違ったことや嘘を教えてくる
    • 自分のことを嫌いと言ってくる
    • 顔が嫌い

もちろん好き嫌いは色々これだけではありませんが、一旦この程度で。そして、これらの条件を前述した「情報を蓄積して最適解を導き出す」の視点で見てみると、なかなか理解が深まります。

「ご飯を食べさせてくれる」「優しくしてくれる」などは、まさに生存に関わることなので、これをしてくれる人を好きになるのは何となく理解できると思います。

一方、「正しいことを教えてくれる」人はどうでしょうか。そうしてくれる人は、例えば親や先生、先輩などでしょうか。正しいことを教えてくれるということは、自分が判断するときに間違えるケースが減り、生きる上で、そして他人から評価される上で、とても重要な「知識」を教えてくれた、ということになります。そういうことをしてくれた人に対して「感謝の気持ち」を持つのは自然なことで、そうすると「好意を抱く」のではないかと思います。そして、そういった経験を蓄積していく上で、脳の中にはその「親」「先生」「先輩」の顔も同時に記憶されることになります。逆に、自分にとって嫌なことをする人は、嫌な経験とともにその人の顔も記憶されていきます。

さて、初対面の人に会った時、何となく好き、何となく嫌いというファーストインプレッションを感じることがあります。これはどのようなメカニズムなのでしょうか。おそらくですが、パッと初対面の人と会うと、脳の中で今まで会ったことのある人の顔のデータベースが検索され、記憶にない場合近い顔の人の記憶を引っ張り出すのかなと思います。すると、記憶の中の近い顔の人に対する印象も紐づいてきて、それが好印象の人であれば「あ、この人は何となく好きだな」と、印象が悪い人であれば「何となく嫌い、怖い」と思うのではないでしょうか。

そして、これら「好き」が一定の量組み合わさってくると、自分が生きて行く上で相手のことを必要と思ったり、一緒にいたいと思う気持ちが強まり、それが「愛」に変化していくのではないでしょうか。もちろん、これは愛の一面でしかないと思いますが、部分的にはそういうことがありそうな気がします。

ロボットにとっての「愛」

ここまで推論を進めてくると、勘のいい方は既にお気づきと思いますが、ロボットにおいても「愛」はあるのではないか、ということです。

ロボットにとって重要なことはプログラムのされ方に因るところが大きいと思いますが、例えばロボットにとって重要な要素として、「自分が正常かどうかセルフチェックする」というのは大抵のロボットにあると思います。

多くのロボットには、起動時や、動作中も一定の時間毎に、自分の状態をセルフチェックする機能が搭載されています。

  • センサーは正常か
  • エネルギーは十分か
  • 通信は正常か(安定しているか)
  • 期待される動作を正しく出来ているか

これは、PCやスマホでも起動時に行われている動作で、もしセルフチェックして問題があった場合、アラートを出して修理してもらったりします。

そして、今のロボットは、必要性から特にプログラミングされていませんが、今後ロボットには自分が正常に動作しているかに加え、自分が正常な状態を維持するために必要なことを学習していくためのプログラムが搭載される可能性は高いのではないかと思います。

例えば公共エリアで働くロボットが誕生したとしましょう。業者が定期的にメンテナンスを行う以外、自分で独立してセルフチェックを行い、不調な場合にアラートを鳴らすというのは、必要最低限な機能だと思います。

その上で、例えば自分に危害を加えてくる人がいたとしましょう。いたずらをしたり、暴力で壊そうとしてくる人が出現することは、残念ながら想像の範疇と思います。

すると、ロボットにはそうした危害を加えてくる人の「顔」「加えてきた危害」について記憶する機能が必要になってくると思います。この記憶に基づいて、例えばその人を警察等に通報したり、再び近づいてきたときに認識してアラートを鳴らすといったことは、ロボットが正常な動作を継続するために必要な機能になると思います。

一方で、ロボットに優しくしてくれる人も記憶するプログラムをしたとしたら、どうでしょうか。危害を加えてくる人から守ってくれた、バッテリーが切れかけたときに緊急でアラートを出したら近くの人が充電してくれた、といった記憶をしたら、今後同様な問題が起きたときに真っ先に頼ったり、普段会った時に「この間はありがとうございました」と感謝の気持ちを伝える、というプログラムは、普通にあり得ると思います。

そうした気持ちが重なってきた場合、例えば何度も自分の危機から守ってくれる人に対し、いわゆる人の「愛」とは異なるかも知れませんが、ロボットが強い好意を抱くことは十分あり得ると思います。

そして、人は自分のことを「好き」といつも言ってくれる人のことを好きになるという傾向もありますから・・・もしかしたら、そういう関係のカップルが生まれることだって、未来ならあり得るかも知れませんね。


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